巻頭言

 

21世紀への提言

 

縄舟 秀美


   来る10 月14 日(木)・15 日(金)の両日,第14 回マイクロエレクトロニクスシンポジウム(MES2004) が,大阪大学コンベンションセンターにて開催される。例年500 名を超える多くの参加がある。MES2004 では,幅広いエレクトロニクス実装関連分野(実装材料・部品,回路板,半導体チップ実装,半導体パッケージ・デバイス・モジュール化技術,実装プロセス,MEMS・ナノテクノロジ,機器実装,評価・シミュレーション技術,生産技術・装置・システム,設計・評価技術,環境保全・リサイクル技術)の論文が発表され,新たなユーザニーズに対応するトータルリソリューションが議論される。エレクトロニクス実装学会に関西支部が設立されて初めてのMESでもあり,多くの方々のご参加をお待ちしています。
   最近,デジタル家電の好調を受けて,エレクトロニクス業界にも明るい兆しが見えてきた観測があるものの,関係する研究者・技術者をとりまく環境は依然厳しい状況にある。このような状況の中で,IT 不況をものともせず成長を続ける電子機器・電子部品メーカも数多くある。これらの企業は共通して,過去からの技術的遺産にこだわることなく,技術的深化とともに技術的イノベーションに立脚した,独自のコア技術およびこれらを集積した自社製品を開発している。技術的常識は過去からの貴重な遺産ではあるが,技術的常識への安住は沈滞に繋がる。半導体関連では,製造技術における中国・台湾・韓国の台頭,コンピューティング・ネットワーキング・通信技術におけるアメリカの覇権の中,従来の量産指向のDRAMから付加価値の高いシステムLSI製造への展開が顕著になりつつある。このシステムLSI 製造における要素技術は実装技術であるが,従来の技術分野の壁を超えたトータルリソリューション,プロセスイノベーションに基づく新たな実装技術の構築が急務である。
   21 世紀を迎え,単なる「ものづくり」から知的財産立国に向けたオリジナル科学技術の構築へのイノベーションの重要性が顕著になってきた。従来,半導体製造とそれを実装するプリント配線板製造の間の技術的障壁は大きく,有機的なトータルリソリューションが必ずしもなされてきたわけではない。本学会は日本では唯一のエレクトロニクス実装関連の学会であり,上記の半導体製造とプリント配線板製造との双方
向からのリソリューションが可能な唯一の学会でもある。本学会が,エレクトロニクス産業における知的財産立国に向けた新機軸構築の牽引車となることを期待したい。

本会副会長,MES2004 組織委員長/甲南大学理工学部 教授
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.7, No.6)」巻頭言より


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