巻頭言

 

大量消費型社会から循環型社会への転換期

 

細田 奈麻絵


    "It is not the strongest of the species that survive, nor the most intelligent, but the one most responsive to change."
-Charles Darwin, (?) 
   『進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われています。』
小泉内閣総理大臣が平成13年9月27日の所信表明演説の中で引用 (http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2001/0927syosin.html) されて以来、頻繁に引用されるようになり日本でも有名になった一節である。
   ダーウィンが本当に言ったかどうかで論議が巻き起こったが、それは横に置いても変化に対応することの重要性を指摘するこの引用文は魅力的である。
産業界において「生き残る」ために「変化に対応」しなくてはならないものは、その産業の種類によっても千差万別である。しかし「対応」が迫られている共通の事柄は「環境問題への対応」であろう。21世紀は「環境革命」の時代と言われ、19世紀の「産業革命」から始まった大量消費型社会に終止符を打ち、持続可能な循環型社会への変換期であるとも言われている。
   エレクトロニクス関係の環境調和型製品への取り組みを見てみると、2001年の改正リサイクル法、2002年の家電リサイクル法の施行、2006年EU全域で施行予定の電気・電子機器廃棄物処理指令(WEEE)および有害物質使用規制指令(RoHS)などを後ろ盾に活発化されてきた。特に従来のスズ/鉛共晶はんだは2006年よりRoHSにより使用が禁止されるため、スズ/鉛共晶はんだに替わる新しいはんだの開発が活発に行われ、本学会でも研究会、シンポジウム、学会誌を通して議論し情報を発信してきた。鉛などの有害物質規制への対応の他にリサイクルを前提にした分解しやすい製品設計思想への変換、CO2削減のための省エネルギ化などの技術的な問題や社会システム的問題など問題はまだ山積している。
   本学会は日本では唯一のエレクトロニクス実装の学会であり、その立場上エレクトロニクス実装技術全般の「変化」と「対応」さらに「創造」のヒントとなる社会の動向や最先端技術の情報を発信し、学術的な討論の場を提供する役割を担っている。
   今後も本学会がエレクトロニクス産業の「環境革命」を支える存在となりその役割を果たすことを祈念したい。

本会理事/独立行政法人 物質・材料研究機構エコマテリアル研究センター 主幹研究員
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.7, No.2)」巻頭言より


×閉じる