巻頭言

追い風を活かして

榎本 亮


 今年5月の総会において理事に選任されました。本学会発展のために微力ながら努力してゆく所存ですので、よろしくお願い申し上げます。
 新理事に選任された際、本学会は最近追い風が吹いて勢いのある学会になってきているので、がんばって下さいとのことでした。まさにその通りで、システムオンチップ(SOC)とシステムインパッケージ(SIP)のどちらが有効かという議論が活発に行われており、現時点ではSOCには多くの課題があるために、システムLSIが利用できる用途が限られているとの見方が主流を占めているようです。しかしながら、システムLSIに適した新しい半導体生産システムも提案され、本格的な開発が始まっていることなどから、10年後にはこの状況がかなり変わってくる可能性があります。したがって、できるだけ早くSIPの特徴を最大限活かした実装技術、特にチップ間の高速伝送化に対応できる技術を確立して実証することにより、確固たるポジションを確保しておくことが最も重要と思われます。
 そのためには、これまでのように経験的なデータを主体にするのではなく、産官学が連帯してもっと論理的に実装および回路板技術の研究開発を進めることが不可欠となります。筆者の記憶が正しければ、5年以上前に比べると大学や研究機関からの発表がかなり増えてきており大変好ましい限りですが、それでも他の学会に比較してまだまだ少ないように見受けられます。また、SIPの開発は言うまでもないことですが、これまでのような単なるコンポーネントではなくシステムあるいはサブシステムの開発となるため、システム、半導体をはじめとした幅広い分野の技術者が参画されることも重要なポイントとなります。エレクトロニクスの生産拠点がどんどん海外に移り国内の空洞化が懸念されていることに対応するためにも、当学会がさらに活性化することにより、わが国独自の付加価値の高い実装技術が次々と開発されることを期待しております。
 ところで私が勤めている会社は岐阜県の大垣市にあり、比較的関西に近いこともあって、ここ数年関西で開催されるマイクロエレクトロニクスシンポジウムと関西ワークショップの企画・運営をお手伝いさせていただいております。現在学会の事務所はいろいろのいきさつから、東京のはずれの西荻窪にあります。関東に住んでいる会員の方々はそれほど不便に感じていないかもしれませんが、関西方面に住んでいると東京に出たついでにちょっと事務所によって打ち合わせたり、情報を交換したりすることがかなり難しく、できれば東京駅から便利な所に事務所があると大変ありがたいと思っております。

(社団法人エレクトロニクス実装学会理事,イビデン)
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.4, No.7)」巻頭言より


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