巻頭言

日本の電子機器産業における
実装技術の重要性の高まり

平田 勝弘


 今年度、理事に初めて選任いただきました。本学会発展のため、微力ながら努力して参る所存ですので、宜しくお願いいたします。
 製造業に携わるものと致しまして、お客様に付加価値を認めていただけるものをどう提供できるか、という観点で仕事をしております。顧客に、付加価値があると認めていただけるのは、お望みの仕様のものが、お望みの納期で、ご予定価格内で提供できた時です。これら3つの必要条件を実現する手段としての実装技術の重要性について、少し述べたいと思います。
 電子機器産業におきましては、お客様としての個人がますます重みを増しています。個人の欲求として、好きな時にやりたいことができることが基本ですから、多機能な仕様のものが、軽くて、持ち運べることに付加価値があります。このニーズを具体化したものとし携帯電話(情報端末に進化しつつある)がありますが、これが爆発的にヒットし、2000年度、世界での需要が4億台を超えると言われています。携帯電話は、その中に200個もの電子部品が使われ、小型、軽量を付加価値とする実装技術の粋であることは、言うまでもありません。
 消費者の要求の多様化、高機能化に対応するため電子機器のモデルチェンジ頻度がますます増加し、携帯電話では今や6ヶ月/一回となっていますし、ディジタル家電は1年/一回が一般的です。
 これらの製品のKeyとなる半導体の開発量産化には最低6ヶ月は必要ですので、このような短周期のビジネスには、できるだけ既存の部品の組み合わせで機能を実現することが求められます。システム オン シリコン(SOC)とシステム イン パッケージ(SIP)の議論が活発に行われておりますが、ビジネスモデルとしてどちらが適当かを製品分野毎に選択する必要があると思われます。実装技術の発展がビジネスの可能性を広げています。
 最後に、低価格化の要求はとどまるところを知りません。したがって製造者側には、製品の設計段階から徹底したコストダウンが求められます。高機能な製品を低コストで実現する手段が、正に実装技術です。ここに、各製造メーカの存在感があるのではないでしょうか。
 このように、電子機器産業の中で、実装技術はますますその重要性を増して来ております。学問にきちっと裏付けされた形で、日本の実装技術が引き続き発展し、世界の中で牽引的役割を果たしていけるよう、切に期待してやみません。

(JIEP理事,三菱電機半導体生産・技術統括部アセンブリ技術部長)
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.3, No.7)」巻頭言より


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