2003 ICEP
国際会議開催報告
 Report on 2003 ICEP

 

 2003 ICEP 国際会議を終えて

橋本 薫*1,梅野 正義*2,渡辺伊津夫*3,浅井 博紀*4


2003ICEP組織委員長 橋本薫氏    IMAPS Japan/(社)エレクトロニクス実装学会 (JIEP) とIEEE CPMT Japan Chapterが共同開催する2003 ICEP (International Conference on Electronics Packaging) 国際会議が、4月16日から18日の3日間、第一ホテル東京シーフォートで開催された。 この国際会議を開催するにあたり、組織委員会では、本会議がマイクロエレクトロニクスの実装関連における日本最大のそして世界からも高く評価される会議となるよう努力し、参加された方々が、学術交流だけでなく人的交流の面でも充実できるものとするという基本方針を持って臨んだ。 この会議が旧IEMT/IMCからICEPと改称して3年目、その呼称と共に会議の意義も参加者各位に十分に浸透してきている折でもあった。 ICEP関係者は、より充実したプログラム内容と多くの参加者を迎えての開催を期して、そしてそれらが実装技術の更なる飛躍につながる契機となるよう準備を進めてきた。 ところが、関係者の期待感に水をさすように、開催直前のイラク戦争の勃発や、現在も大きな社会不安を引き起こしている新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)の蔓延が、ICEP開催に暗い影を投げかける状況となった。 周辺アジア諸国では展示会への参加者が大幅に減員していることや、学会開催が延期されているなどの情報も入ってきていた。 本会議も開催自体が危惧される事態となった。 しかし、本会議が、世界的にも深く認知された会議で重要な地位を占めていること、日本にSARSが上陸していないこと、本会議ならびに同時開催のマイクロエレクトロニクスショーの運営体制が十分に整っていたことを鑑み、橋本委員長をはじめとする会議関係者の強い意志で、会議を例年通り実施することとし、開催当日の朝を迎えた。 旧IEMT/IMCからの会議も含めて、この国際会議が、これほどの世界的危機の中で開催されたことは、湾岸戦争の時でさえなかった。 会議がどのような状況になるのかは、直前まで十分読みきれない部分もあったが、幸い会議開催の3日間で例年並の総勢320余名の参加を得て、ほぼ成功理に会議を開催することができた。 この成功は、ひとえに、本会議が人的交流を重視していることに対して、長年にわたり賛意を表して下さった多くの参加者の方々から、過分なるご協力を頂戴できたおかげであります。 ここに心から感謝の意を表します。

   会議プログラムは、2つの招待講演と14の専門領域での登録数92件の講演からなり、最先端の技術研究・開発、動向について発表がなされた。 また、昨年の優秀論文に対して、その栄誉を称えるセレモニーも執り行われた。

   昨年の招待講演は、アジアの実装関連技術を中心とした特別企画を組んだが、今年は欧米の動向を中心とする企画で臨んだ。 IMAPSノースアメリカ会長のピーター・バーンウェル氏により、米国IMAPSにおける活動内容と関心事について "IMAPS NA- Status and Future Directions"と題して講演頂いた。 全般的な動向についての講演のほかに、プラスチックパッケージ全盛の中、セラミックパッケージの復活も一部で熱く議論されていること等が紹介された。 聴講者から「なぜ今セラミックスなのか?」と質問が出るなど、米国の動向通でなければわからないような内容が紹介され、好評であった。 一方、ヨーロッパの事情について、”Advanced Flip Chip Technology and It’s Application in Europe”と題して、Pac Techのエルケ・ザーケル氏にご講演をお願いした。 残念ながら、女史は直前に体調を崩され参加が叶わなかったが、長野県工科短期大学校の傳田精一氏がフランス・ボルドー大学のクリスチャン・ザルディーニ教授と共に、女史から直接入手した本会議用の講演資料と内容を紹介して下さった。 お二人で議論しながら講演するという対話形式となり、かなり新鮮な印象を与えた講演であった。

   専門領域での講演でも、朝早くから先端技術の研究・開発動向が発表された。 今年は、事前登録の段階で例年以上の登録数を記録しており、益々の発展が期待された会議であった。 しかし、冒頭にも述べたように、厳しい国際情勢を背景に、特に香港、シンガポールからのほぼ全ての発表者が来日を控えた為、一部で発表がキャンセルされた。 致し方ないこととはいえ残念であった。 その一方で、IMAPSフェローの宮代文夫氏が、先述の傳田氏同様に、シンガポールからの欠席者の原稿を直接入手され、急遽発表を代行して下さった。 また、前IMAPSノースアメリカ会長のチャールズ・バウアー氏が、キャンセルの講演時間帯に特別講演をして下さり、会議は更に盛り上がった。 この他にも、会議の進行に関して多くの参加者の方々から多大な協力を頂戴し、充実した国際会議が開催できた。 この会議のテーマである実装技術が重視されている事実もさることながら、改めて国際的な人的交流がいかに重要であるかを痛感させられる会議であった。

   人的国際交流を図る機会は、学会開催期間中、様々な形で行われた。 日中は学術的論議を中心としたものであるが、夕刻からのレセプションなどでは、新たな人脈形成や旧交を温めるなどして、太い絆の形成に役立った。 また、そうした交流の一つの成果として、IMAPS ALC(Asia Liaison Committee)が組織化されることがほぼ決まり、今後は、この会議(ICEP)が他のアジア諸国と連携しながら、更に飛躍する方向性を得ることとなった。 まだ世界情勢の日差しは弱いが、本会議のテーマである実装技術の研究・開発領域は更に発展していく様相を呈している。 今回は、SARSの発症率の高い国からの参加が控えられたが、それ以外、例えばアメリカ、ヨーロッパ、韓国からは、例年通りの参加者があった。 来年、世界情勢や新型肺炎等の国際的な課題が沈静化した折には、特にアジア諸国からの参加者が大幅に増えるものと期待される。

   前年度の開催で発表された優秀な研究内容に対して、JIEPの若林信一国際委員会委員長からベストペーパー賞が4名の方に、IEEE CPMT Japan Chapterの梅野正義会長よりIEEE CPMT Young Awardが3名の方にそれぞれ授与された。 研究成果の発展を期待したいところである。 なお、優秀論文賞受賞の栄誉に輝いた4件の論文、ならびに IEEE CPMT Young Awardの栄誉に輝いた 3件の論文の著者と所属と論文タイトルは別表に記した。

   こうして、3日間に及ぶ国際会議は幕を閉じた。 世界情勢が流動的な中で学会が開催されることは、今後も十分有りうる事であろう。 学会といえども十分な危機管理が必要になってきていると感じさせられた会議でもあった。 しかし、的確な情報収集と相互の連絡、そして何より大切な太い絆で結ばれた人的交流があれば、こうした危機の中でも的確に判断して行動できることが示せた会議であったとも思う。 改めて、参加者各位の多大なご協力に対し深く感謝を申し上げます。

   以下、各セッションの座長によってまとめられたセッション毎の様子や発表の概要を報告する。


  *1 Kaoru Hashimoto
    (2003 ICEP組織委員会委員長, JIEP理事)
    富士通研究所/Fujitsu Laboratories Ltd.
*2 Masayoshi Umeno
    (2003 ICEP組織委員会副委員長, IEEE CPMT
    Japan Chapter会長)
    中部大学/Chubu University
*3 Itsuo Watanabe
    (2003 ICEP組織委員会副委員長)
    日立化成工業/Hitachi Chemical Co., Ltd.
*4 Hironori Asai
    (2003 ICEP組織委員会副委員長)
    東芝/Toshiba Corporation
共催: IMAPS Japan / JIEP,   IEEE CPMT Society Japan

セッションサマリーへ          2002ベストペーパー賞・ヤングアワード